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元町映画館☆特集

つむぐもの

あなたの感情を拾いあげてくれる越境映画

つむぐもの

【あらすじ】
福井県で紙漉き職人として働く剛生はある重病を患い歩くこともままならなくなる。一方、韓国人女性のヨナは働いていた職場をクビになり実家で食っちゃね生活。運良くワーキングホリデーとして日本に留学するがその職場は剛生が働く紙漉き工場。ヨナはそこで剛生の介護をする羽目に。初めは意見がぶつかり合う二人だったが「介護」を通じて出会う人たちとの交流もあり、剛生とヨナのわだかまりは溶けていく。

【見どころ】
「介護」映画、そう言われるとちょっとしんどくなりませんか。本作はそうではありません。人がどうやって距離を縮めるか。私はまず冒頭の剛生の紙漉きの音で自分と映画との距離がぐっと縮まりました。劇場てすごい、少しの微細な音でも拾いあげてくれます。そしてキム・コッピ演じるヨナの屈託のない笑顔が最高だ。

ワーキングホリデーとして日本にやってきたヨナにとって「介護」は初めての経験。剛生の介護の前に施設で経験を積むことに。自己紹介からベテラン介護士蓉子のゲキが飛ぶ。「そんな生半可な気持ちじゃ介護は伝わらないよ」と。それに反抗するかのようにヨナの介護が始まる。ヨナの態度は反感を買うけど同時に誰かの感情を動かす。日本語が理解できていればここでいざこざが生まれるのだろうけど。理解するのに言葉は必ずしも必要ではないということが伝わる、そんなシーンだ。

私も自由な生活をしてきたが、それはあくまでルールの中のお話。いざ介護施設で働けと言われればマニュアル通りの生活になってしまうだろう。ましてや車椅子に人を乗せたまま走るなんてことは…と業界内では絶対行えないことをサラリとこなすヨナ。年齢も性別も超えて、何かを手に入れるためには彼女のような範疇にとらわれない言動がこれから必要になるんだろう。

NHK連続テレビ小説『あさが来た』にも出演した吉岡里帆が指導係の涼香を演じる。ヨナと違って可もなく不可もないザ・平均介護職員。身振り手振りで介護を伝えるその素振りに涼香の真面目さが見える。涼香の姿に多くの人間が共感できるのではないか。自分の型に要介護者をはめようとする涼香を見てヨナが言う『この人(要介護者)全然楽しそうじゃない。笑ってないのに同じことを続けるのは変だよ」。言ってみたいなこんなまっすぐな言葉。10年前はサラッと言えたのに何がこんなにも私を屈折させてしまったのだろうかと言いたくなる。

だからこそ最後に涼香がヨナにかける言葉が成長した彼女を表現する良い台詞だった。
自分の感情を真っ白にして本作を見る。見る人によって喜怒哀楽がどこかで出てくる。自分の感情をさらけ出す、見たあと誰かに話したくなる、そんな映画だった。


映画『つむぐもの』
6/25(土)~7/1(金)
10:00~
7/2(土)~7/8(金)
13:00~
毎週火曜日レデイースデー
毎週水曜日メンズデー 
ともに¥1100


毎週火曜日はレデイースデー(¥1100)
水曜日はメンズデー